ドローン飛行許可・承認申請の実務ガイド
特定飛行の判定から包括申請・飛行後の義務まで

ドローンを業務で飛ばす場合、多くのケースで国土交通大臣の許可・承認が必要になります。本記事では、依頼を受けた際にまず確認すべき「特定飛行に当たるか」の判定から、DIPS2.0での申請手続、実務の要となる包括申請、そして飛行後も続く義務までを、行政書士の実務目線で整理します。

1. 前提:まず機体登録を確認する

飛行許可の話に入る前に、機体登録が済んでいるかを必ず確認します。2022年6月の制度開始以降、機体重量100g以上の無人航空機は登録が義務であり、登録記号の表示とリモートID機能の搭載が求められます。未登録の機体は、そもそも飛行させることができません。

依頼者が「許可を取りたい」と相談してきた段階で機体登録が未了というケースは珍しくありません。登録手続も DIPS2.0(ドローン情報基盤システム)で行うため、あわせて受任できる場面です。

2. 「特定飛行」に当たるかを判定する

航空法上、許可・承認が必要となる飛行を特定飛行といいます。特定飛行は「飛ぶ場所(空域)」と「飛ばし方(方法)」の2つの軸で定められており、いずれか1つでも該当すれば手続が必要です。

許可が必要な空域(4類型)

空域補足
人口集中地区(DID)の上空市街地はほぼ該当。相談件数が最も多い
空港等の周辺(進入表面等の上空)空港事務所長が申請先となる
地表または水面から150m以上の高さ同上
緊急用務空域災害等で随時設定される。当日の確認が必須

承認が必要な飛行の方法(6類型)

飛行の方法典型的な依頼場面
夜間飛行夜景撮影、点検業務
目視外飛行広域測量、インフラ点検
人または物件から30m未満の距離での飛行建物の外壁点検、近接撮影
催し場所の上空での飛行イベント・スポーツ大会の撮影
危険物の輸送農薬散布(薬剤の種類による)
物件投下農薬・肥料の散布、物資輸送
ポイント:農薬散布は2類型に同時該当することが多い

農薬散布の依頼は「危険物の輸送」と「物件投下」の双方に該当するのが通常で、さらにDID上空や目視外が重なることもあります。該当類型を取りこぼすと、許可の範囲外の飛行になってしまうため、ヒアリング段階で漏れなく洗い出す必要があります。

3. 申請先と申請期限

申請先は、飛行させる空域によって分かれます。

飛行する空域申請先
空港等の周辺/150m以上の空域東京空港事務所長 または 関西空港事務所長
上記以外の区域東京航空局長 または 大阪航空局長
最重要:申請は「10開庁日前まで」+補正の余裕を見る

申請は飛行開始予定日の少なくとも10開庁日以上前に提出しなければなりません。さらに国土交通省は、審査に一定の期間を要するとして3〜4週間程度の余裕をもった申請を推奨しています。補正指示が入ればその分さらに延びるため、実務では飛行予定日の1か月前には着手したいところです。「来週撮影なので急いで」という相談は、この時点でスケジュールの再調整を提案することになります。

申請は原則として DIPS2.0 によるオンライン申請です。書面申請も可能ですが、許可書の取得までの時間はオンラインの方が短く、実務上もオンラインを選ぶのが通常です。

4. 個別申請と包括申請の使い分け

1回限りのイベント撮影であれば、日時と場所を特定した個別申請で足ります。一方、業務として継続的にドローンを使う事業者の場合は、包括申請を検討します。

個別申請包括申請
対象日時・場所が特定された1回の飛行期間・経路をまとめた反復的な飛行
有効期間その飛行のみ最長1年
向くケース単発のイベント撮影点検・測量・農薬散布などの業務利用

包括申請には「期間包括」(一定期間内の反復飛行)と「飛行経路包括」(経路を特定せず広域を対象とする)の考え方があり、事業者の業態に合わせて設計します。年間を通じて飛ばす依頼者にとっては負担軽減効果が大きく、行政書士が価値を出しやすいのはこちらです。

ポイント:10時間の飛行経歴

申請にあたっては、操縦者の飛行経歴(一般に10時間以上)、機体の諸元、安全管理体制、飛行マニュアルの整備などが求められます。経歴が不足している依頼者には、まず民間スクールの受講や練習の積み上げを案内することになります。

5. 機体認証・技能証明との関係

2022年12月施行の制度により、飛行はリスクに応じてカテゴリーI・II・IIIに区分されています。カテゴリーIIIが最もリスクの高い飛行、いわゆるレベル4飛行(有人地帯における補助者なしの目視外飛行)にあたります。

区分内容手続の要否
カテゴリーI特定飛行に該当しない飛行許可・承認は不要
カテゴリーII第三者の上空を飛行しない特定飛行原則必要(一部は不要にできる)
カテゴリーIII第三者の上空を飛行する特定飛行(レベル4)第一種機体認証・一等技能証明等が必要

実務上おさえておきたいのは、カテゴリーIIの一部については、機体認証を受けた機体を、操縦者技能証明を有する者が操縦し、かつ立入管理措置を講じることで、飛行許可・承認の手続が不要になるという点です。

注意:技能証明があれば何でも不要、ではない

「二等資格を取ったので許可はもう要らない」と考えている依頼者は少なくありませんが、これは誤解です。空港等の周辺、150m以上の空域、催し場所上空、危険物の輸送、物件投下については、機体認証・技能証明があっても引き続き許可・承認の手続が必要です。この線引きの説明自体が、行政書士の相談価値になります。

6. 飛行後も続く義務

許可を取れば終わりではありません。特定飛行を行う場合、次の義務が継続的に課され、いずれにも罰則があります。依頼者への説明とセットで案内したい部分です。

義務内容違反時の罰則
飛行計画の通報飛行の日時・経路・高度等を事前にDIPS2.0で通報30万円以下の罰金
飛行日誌の記載飛行記録・日常点検記録・点検整備記録の3種を作成保持10万円以下の罰金
事故等の報告人の死傷、物件の損壊、制御不能、火災等を報告30万円以下の罰金
負傷者の救護飛行を中止し、救護・通報等の措置をとる2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
継続業務につながるポイント

飛行日誌の様式整備や飛行マニュアルの改訂は、許可取得後も発生する作業です。包括申請の更新(1年ごと)と合わせて、年間を通じた顧問的な関与に発展させやすい分野といえます。

7. 航空法以外の規制も忘れない

航空法の許可を取っただけでは飛ばせないケースがあります。依頼を受けたら、次の点もあわせて確認します。

8. 行政書士業務としてのドローン

ドローン関連業務は、次の理由から新規参入しやすく、かつ継続性のある分野です。

報酬は事務所によって差がありますが、個別申請で3万〜6万円程度、包括申請で5万〜10万円程度を目安としている例が多く見られます。機体登録や飛行マニュアルの作成を別建てとするかどうかでも変わります。

9. よくあるつまずき

つまずき対応
飛行予定日が近すぎる10開庁日ルールを説明し、日程の再調整を提案する
機体登録が未了登録手続から受任する
飛行経歴10時間に満たない練習または講習の受講を案内する
該当する飛行類型の取りこぼしヒアリングシートで空域4類型・方法6類型を機械的に確認する
資格があるから許可不要と誤解している手続が不要になる範囲を具体的に説明する
条例や施設管理者の同意を見落とす航空法以外の規制を確認するチェック項目を設ける

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の案件への法的助言ではありません。無人航空機に関する制度は改正が頻繁に行われています。申請にあたっては、必ず国土交通省「無人航空機の飛行許可・承認手続」および無人航空機レベル4飛行ポータルサイトで最新の情報をご確認ください。(最終更新:2026年7月26日)